人間の証明

やまがきです。このブログをあーだこーだ言いながら作った代もそろそろ卒業って感慨深いですね。せっかくあるので後進の方々にも上手く使って欲しいと思いつつ、今日も読んだ本紹介です。
新入生向け本?の「人間の証明」読みました。

新装版 人間の証明 (角川文庫)

新装版 人間の証明 (角川文庫)

(借りた本と同じ表紙の画像がなかった…)

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高層ホテルの、展望レストランのある最上階に到着したエレベーター内で、腹部を刺されたまま乗り込んできた黒人青年が死亡した。
犯行はどこで誰が行ったのか、被害者は何者なのか。
刑事は被害者が遺した西条八十の詩の舞台、霧積温泉から被害者の過去を辿っていく。

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この小説には「人間らしさとはどういうことか?」と問いかける場面が繰り返し出てきます。
欲望に忠実であること、恋愛、家族のあり方などなどが描かれ、登場人物たちはそれを肯定したり否定したりします。もちろんそれぞれにとっての”人間らしさ”が他人を傷つけることなど思いもしないのです。この小説はそれぞれにとっての人間らしさが不躾に他人を傷つける様も描いています。
この小説が何をもって「人間らしい」とするかは読んでからのお楽しみですが、夏碓氷から霧積に到る渓谷に落としてしまった麦藁帽子、その詩が漂わせる哀愁と憧憬は登場人物たちのコンプレックスでもあり、全編を通して読んでいる私たちに訴えかけてきます。

最後、全てのエピソードが繋がっていくところはジグソーパズルを作ってるみたい。出来上がりがわかっていてくるぞくるぞというところはまんまサスペンスドラマです。でもこういう展開、私好きみたい。

あととにかくこれが30年前に書かれた本とは思えない。ネタや文体に古くささを感じません(当時の風俗が描かれるのはともかく)。逆に言えば、当時の著者の問題意識が現代社会でより深刻化しているということでしょうか。人間の証明現代バージョンもあるみたいです。

初めて読んだんですけど、映画化、ドラマ化したベストセラーなだけあります。驚くようなトリックや動機はないし登場人物にものすごい魅力があるわけでもないけど、非常に読みやすいです。

ところでこの本を神谷君に返せる日はいつなのでしょう…