不定期連載『たわごと』第二回 サンタクロースby???

「冬はつとめて…」などと某女官が宣うていたが、くそ寒いのにその上さらに寒い早朝のどこが「いとおかし」なのか。朝は毛布に包まって寝ていたいものだ…
 それはそうと、冬と言えば何を思い浮かべるだろうか?そう、サンタクロースだ。さて、皆さんはサンタクロースの起源を知っているだろうか?そこには悲しくも壮絶な、ある一人の男の想いが秘められている。今宵はその物語を語ることとしよう…そこっ、寝るなぁ!

 -時は戦乱の真っ只中のとある時代、某国の大将軍クロウスは日々戦に明け暮れていた。戦場における勇猛さと残忍さは隣国にまで鳴り響いていおり、彼の戦袍(せんぽう)は幾千の敵の返り血を浴びて、暗赤色に染まり、いつしか「流血の貴公子」と呼ばれるようになった。家族は皆幼い頃にはやり病で死に果て、地獄のような日々を過ごした彼には、この世に対する憎しみのみが自らを保つ唯一の術であった。憎しみの念に身を委ね、ただひたすら人を斬り続けた。阿鼻叫喚の巷こそが彼の求めていた世界であり、凡てであった…
 そんなクロウスを恐れた国王は、勝ち目の無い戦に赴かせ彼を亡き者にしようとした。そんなことなど全く意に介さない彼は、その戦に大敗し命からがら落ち延びていった。食料も尽き、極限の飢餓状態となり道端に倒れ付していた彼に一人の幼い少年が歩み寄り、満面の笑顔を浮かべて持っていたパンを差し出した。彼はそれを脇目も振らず貪り食い、落ち着くと少年の方へと向き直った。すると少年は金色の光に包まれて消えていった。彼はこの時初めてぬくもりと言う言葉の意味を知ったのだ。彼の心に巣食っていた憎しみの氷河はたちまち氷解し、それまで奥底に沈んでいたあたたかな光が彼の心を照らしていった…
 それからクロウスは修道院へと行き、己の犯した罪を告白し神の許しを乞うた。来る日も来る日も寝食を忘れて祈り続けた。はや幾年が過ぎた頃だろうか、すっかり白髪の老人たなった彼は、夢のなかで神の啓示を受けた。そう、世界では多くの無垢な子供たちが苦しんでいる。そんな子供たちの希望の光となることこそ、そなたの贖罪である、と。
 こうして彼は、毎年冬になると己への戒めの意味を込めた真紅の衣装に身を包み、世界中の子供たちに贈り物を届けたと、某伝説は示している。そんな彼のことを、人々はセント・クロウス、後に変化してサンタ・クロースと呼んだそうな-

編集後記:なぜか長編に…もちろんこの物語はフィクションです。実在の国家、組織、個人とは一切関係ございません。