アイデアのつくり方 byKou

アイデアのつくり方

アイデアのつくり方

 アイデアを作り出すノウハウの、最も本質的な部分を簡潔にまとめた実用書。
 書かれたのが昔のことだし、この分野ではあんまり有名すぎて、逆に読む気がしなかったんだけど、学校の授業の課題で読んで、良さに気付いた。重要な要素を全て盛り込んでいながら、ほとんど無駄が無い。
 書かされた感想文から抜粋してみる。長くたっていいじゃなーい!(よくない)
……
(冒頭略)
 加えて特筆すべきなのは、一冊のコンパクトさである。一見しただけでも薄い文庫本程度の大きさであるし、しかも後半はほとんど解説とあとがきで占められているため、実質的に重要なのはわずか40ページあまりである。このことは、アイデアを作るための本質的な原理はごく単純なものであるという事実を、非常によく具現していると言えるだろう。以上が、本書の全体についての感想である。
 次は、本書の各部分について思うことを述べる。まず冒頭で著者は、アイデアがまるで天から降ってくるものであるように思えても、それは実は意識下での心理過程の結実であり、その過程における技術を磨くということが可能かつ有効であることを述べている。本書のこの部分だけをとっても、一つの重要な知見と言える。アイデアを出す力は先天的な才能によるものと思っている人はかなり多いように見受けられるが、大事なのは方法を知っているかどうかというところなのである。
 これはアイデア作りに限らず、他のさまざまなことについても、方法論が重要となる場合は非常に多いと私は考えている。ここで少し、教育心理学の認知的帰属理論(ワイナー,1972)という知見を引用しよう。人は自分の失敗を、能力・努力・環境・幸運のどれかに帰属するが、このうち努力のみが内因的かつ変動的、すなわち自分の意志で操作可能な要素であり、努力に帰属することでその後の行動が建設的になるというのである。この努力によって修得可能なのが、方法であり技術である。アイデア作りに関しても、才能などではなく方法論に目を向けるのが建設的であるということは、この説明によっても明らかであろう。
 さらに、「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせに過ぎない」という部分がある。これは著者も述べている通り、アイデアの最も重用な本質であろう。アイデアとは何かまったく新しいものを創造するものだと思いがちであるが、そうではなく、組み合わせの問題なのである。私は別の関連書でこれと同じ文を読んだことがあり、そのときは感動したものだが、そのルーツがおそらく本書であったのだということを知り、本書の影響力を改めて実感した。
 実際的な方法については、本書では5段階に分けて説明している。1段階目の「情報収集」はよく軽んじられ、人は何も調べずに頭の中で考えようとしてしまいがちだが、インプットがあってこそアウトプットが可能ということを、私も以前から痛感していた。ただ、ここで新しく気付かされたことがあった。当面の目的に応じて収集する「特殊資料」と、常時蓄積していくべき「一般的資料」との二種類があり、要素の組み合わせとはすなわち、そのそれぞれから持ってくるのである、ということである。こう考えれば、情報収集および組み合わせの際の道筋が格段に分かりやすくなるだろう。
 一つ、本書に加えるべき内容があるとすれば、それは2段階目で「思ったことをとにかく全て書き出す」ということであると思う。人は知らず知らずのうちに、思いついたアイデアの芽をアウトプットする前に揉み消してしまうが、この段階ではそれは避けるべきである。また、著者が述べるようにこの段階は十分に行われないことが多いため、思考を実際に書き出すことで、「大量に案を書き出すまでは諦めない」というように、自分に制約をかけることができるのである。ただしこれはかなり具体的な部類の方法論であり、別の本で語られるべきことなのかもしれない。